2007年 04月 29日
4月29日 シンポジウム・コミュニケーションティーチング
京都芸術センターで、以下の日程にて開催します。
来る6月19日、コミュニケーションティーチングに関するシンポジウムを実施することが決定しました。お昼間には実演授業、その夜にシンポジウムを開催します。どうぞ奮ってご参加ください。
=平田オリザ氏による実演授業=
日程:2007年6月19日(火)10:40~16:00(3~6限目)
会場:京都府宇治市立平盛小学校
対象:小学6年生 2クラス
授業内容:「対話劇を作ろう」
参観者定員:20名
参加費:無料(事前予約制・先着順)
=シンポジウム「コミュニケーションティーチングについて」=
日程:6月19日(火)18時30分~21時30分
会場:京都芸術センター・講堂
内容:コミュニケーションティーチング実例発表とディスカッション
メインスピーカー 平田オリザ氏(青年団・大阪大学教授)
ゲストスピーカー 池田修氏(京都橘大学准教授)
糸井登氏(宇治市立平盛小学校教諭)
梶原剛氏(まつやまアーツマネジメント)
ナビゲーター: 蓮行(劇団衛星)
定員:200名
参加費:500円
主催:NPO法人フリンジシアタープロジェクト
共催:京都芸術センター/大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
協力:EFE/まつやまアーツマネジメント/劇団衛星
参加ご希望の方は、以下の通りお申し込みください。<5月1日より受付開始>
●シンポジウム・・事前にチケットをお求めください。
取扱先:フリンジチケット
京都芸術センター(窓口販売のみ)
NPO法人フリンジシアタープロジェクト 075-724-6502(電話予約のみ)
●実演授業・・お電話でお申し込みください。
NPO法人フリンジシアタープロジェクト 075-724-6502
※定員になり次第、受付終了いたします。
コミュニケーションティチャーの普及に向けて
2007.4.15. 平田オリザ
いま、日本社会は、拡大再生産を前提とする成長型の社会から、多文化共生の成熟型の社会へ、あるいは、大量生産大量消費を前提とする工業中心の社会から、個々の価値観を重視する生活者中心の社会へと、大きな転換期を迎えています。
また、外資の参入、自由貿易協定対象国の拡大などによって、日本社会の国際化が加速度的に進み、今後は、文化の多元化が社会の変質を促す要因となっていくことが予想されます。
フィンランドに代表されるEUの小国は、それぞれが独自の文化を保ちつつ、他国との協調関係を促進するために、「グローバル・コミュニケーション・スキル」と呼ばれる異文化理解のための教育に、この数十年、力を入れてきました。
カナダやオーストラリアなどの多民族国家でも、異文化間のコミュニケーションに重点を置いた教育が盛んに行われています。
こうしたコミュニケーション教育においては、いずれの国でも、演劇や、その他の身体パフォーマンスが、大きな役割を果たしています。たとえば、フィンランドの国語教科書では、各単元の終わりに「この物語を人形劇にしてみよう」「この物語の続きを書いて、脚本にしてみよう」というまとめの項目があります。
限られた時間の中で、異なる価値観や文化的な背景を持った人々が、イメージや感性をすり合わせて一つの作品を創り上げる演劇という営みは、「バラバラな人間が、バラバラなままで、一つの共同体をどうにかして運営していく」という成熟社会における異文化理解、他者の受容に大きな力を発揮します。
また、コミュニケーション能力を養うには、教室で椅子に座って知識を得るタイプの従来型の授業では限界があり、五感を刺激し、全身を使う演劇やダンスが有効だと考えられています。
カナダやオーストラリアには、「ドラマティーチャー」と呼ばれる演劇専門の教師が、初等、中等教育の各校に配置されています。ドラマティーチャーは、選択授業の「演劇」を教えることはもちろんですが、それ以外に他の教科の教員と連動して、新しい教育プログラムを開発しています。理科や社会科、時にはフランス語の授業を、どのように演劇的に進めていくかを考え、またその授業を進める際の手助けをするのです。
日本でも、この「ドラマティーチャー」の設置を制度化したいというのが、私の願いですが、「演劇」という教科すらない日本で、いきなりそのことを実現するのは難しいかと思います。そこで、コミュニケーション教育、表現教育全般に力を貸す「コミュニケーションティーチャー」を育成し、これを各地に配置できないかと考えています。一校に一人が理想ですが、それも現実的には無理でしょうから、人口10万人あたりに一人でも、そういった人員を確保できれば、日本の表現教育の現場は大きく変わっていくのではないかと考えています。
この「コミュニケーションティーチャー」は、他の教員と同様に教育委員会に配属される方法と、地域の公共ホールなどに所属するという二つの方法が考えられます。いずれにしても、学校、芸術文化施設、地域社会の三者が連動して、子どもたちのコミュニケーション能力の向上と、すぐれた生の舞台芸術に触れる機会の提供をセットで進めていく必要があります。
この「コミュニケーションティーチャー」制度を実現するには、地域の実情に併せた柔軟な対応と運営が必要になるでしょう。人材の育成も急務です。
この分野に、「××をしなければならない」という要件はありません。これまで、表現教育に関わってきた多くの関係者が、その蓄積を生かし、ネットワークで情報を共有しながら教材を創り、人材を育成していくことが肝要です。
また同時に、行政による制度化、予算化も進めていただきたいと願っています。
多くの賛同者を募ります。
◇◇◇
この記述に心が惹かれました。自分のクラスでは、昨年、子どもたちと「やまなし」をかげえにして上映しました。読解で読み込んだはずのテキストですが、実際に目に見える形に表現するためには、何度も読み込まなくてはならず、更に子どもたちは様々なプロジェクトに分かれて、没頭しながら作品を創りあげていました。それぞれの感性をすりあわすという表現がぴったりの活動でした。
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関東圏に住んでいるので、どうしても伺うことができず残念ですが、興味があります。ぜひこちらで紹介をしてください。楽しみに読ませていただきます。